2011年01月28日

ベル鳴り

<ベル鳴り>  記 中尾彰秀         詩人・ピアニスト・ヒーラー

 あなたの人生を至福にする百の詩集(98)

 「ベル鳴り」 モリグチタカミ著作集ベル 詩集ベル2  竹林館 2008年出版 B6版 91頁
                                       25篇 1500円+税

 皮肉、ジョーク、風刺、これはトリックである。その背後にある何かを諭すための。刑事コロン
 ボのごとく、まずはじめにそう直観して、後からその何かを探す。諭すべき何かは、本当にあ
 るのか、ないのか。瀬戸際に立たされながら、この一冊の詩集をさらに読み込む。

 それ自体既に、トリックにはまったのである。どこでベルが鳴るのかと言う詩的トリック。

 しかし、取り立ててベルは鳴らないのだ。鳴らずして、ベルの共鳴が身体の奥からゆらりゆら
 ゆら。今そこに生きる生命の、肯定的な慈しみ。あるいは自分自身への、熱い励ましとして。

          「モチつき」

<男が杵で搗く 女が臼に手を入れる それはこの地方のモチつきの情景だった 

 我が生家はそうではなかった 機械搗きだ 臼の中への手入れは女がするが
 搗くのは動力だ 動力源は水力だ 水車の水がシャフトを回転させる 搗く原理
 は横から見えるまま 

 「ト」の字のテンの下に 「へ」の字の左の短辺があてられ 「中」の字の中央の
 タテ線の鉄のポールが杵となり 持ちあげられる 「へ」の字の左の端をこえると
 搗き杵のポールは臼に落下する

 臼の中の蒸したモチ米は 当年当地の田の恵み 大井戸と清流の水を随意に
 選び 裏山の間伐材を燃やして蒸された 製菓原料製造の装置を 二、三戸の
 年末のモチつきに 応用・援用しての企みだ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

 小餅にするとき ちぎられたいくつかが 板の前に並ぶ子らの前に投げ出される
 奪い合うように取り合って まるめられるのだ 

 モチつきの回想は ぬくもりを帯びたねばりを よみがえらせてくれるのだ>
  


Posted by nakao at 17:44Comments(0)芸術