2012年10月05日

佐藤勝太新詩集

<佐藤勝太新詩集> 記 中尾彰秀              詩人・ピアニスト・ヒーラー

 みんなの人生を至福にする百の詩集(80)

 「峠の晩霞」  佐藤勝太詩集 竹林館 2012年 2000円+税 188頁 77篇

       語らずして語る詩。あっぱれにも自意識の沼にはまった
       内なる闇をしつこく語らない。既に超えた活力ある生き方
       を記す。読者にやたら媚びる美しい詩らしさより、生き方
       こそが詩なのだ。そこに漂う深い哀愁と宇宙の真実たる
       仏の微笑たたえ。

           「まいにちが新しい」

<毎日出合す 一挙一動はいつも新しい 同じことをしても 昨日と今日とは違う
 二度と同じことは出来ない 

 だから人生は まいにちが新しいのだ>

           「郷愁の山鳴り」

<胸の中に時折 泌みるように ふるさとの山が浮かんでくる 故郷を棄てて六十年余
 とっくに忘れていたはずの 叢林の木の葉が 誘うように戦ぐのだ

 開け実を採りに 登った木々の蔦が絡まり ターザンごっこをした 脚の傷跡が疼くのだ

 少年たちの呼び声が いまも聴こえるように 郷愁を誘って 山が鳴っている>  


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2012年10月05日

田中昌雄新詩集

<田中昌雄新詩集> 記 中尾彰秀              詩人・ピアニスト・ヒーラー

 みんなの人生を至福にする百の詩集(79)

 「ユウ」  田中昌雄詩集  編集工房ノア 2012年 2000円+税 A5版 95頁 20篇

      一つ一つの現象に、陰と陽のエネルギーが同時に
      やってきて魂は等しく受け取ってしまう詩人。結果、
      混乱した心が悲しみばかりを掴む。これも純粋さの
      一つのあり方かもしれない。しかし時に、心は飛躍
      して魂の哀しみに共鳴ることもある。

      迷わず迷っていてもいつも実在はリアルだからだ。
      人あるいは存在は、ここにありながら遥かなここを
      位置する一つの宇宙の答えだから。いかにむごた
      らしくとも美しいものとして、体験はやってくるのだ。
      その時聞こえるわらべ唄。天降るインプロヴィゼイシ
      ヨンは死人も奏じる。

           「散会のあとの風景」

<もう終わった、みたいよ と、きみは云って つぼみをつけない 花、みたいに
 笑った

 ぼくは、 位置を解かれて 点景のひとつひとつに還った みんなを視ていた

 きみはぼくをすわらせて ひとり、即興の わらべ唄をうたった

 まるで僕たちの、 ついばまれた愛の 風葬のレクイエムであるかのように>  


Posted by nakao at 15:25Comments(0)芸術

2012年10月05日

<鮎> 詩 中尾彰秀                 詩人・ピアニスト・ヒーラー

 吉野川に設置された
 簗(やな)に乗って
 子供たちは大はしゃぎ
 中腰になってややへっぴり腰
 鮎を掴もうとしている
 果たして養殖か天然か
 某新聞の大写真

 私は唖然とする
 ずーと遠方で
 鮎は私たちの分身ですよと
 燦然と輝く山々に

 破壊者であってはならない
 共存でもない
 ましてや復興など
 欧米のヒューマニズム(人間至上主義)は
 とうに魂に響かない
 二ーチェの神は死んだの真意
 生かされつつも
 大自然は神に等しく
 我々の中にあるから
   


Posted by nakao at 14:48Comments(0)芸術