2010年11月11日

おしだとしこ詩集

<おしだとしこ詩集>  記 中尾彰秀     詩人・ピアニスト・ヒーラー

 あなたの人生を至福にする百の詩集(80)

 「白い道」  おしだとしこ詩集  発行「翔の会」 1500円 2010年出版
                     A5版 68頁 24篇

     誰しもが持つこの世の原風景。
     それは大概は、生まれ育ったところの風景。
     とてつもなく懐かしく
     そこで遊び笑い泣いた
     今でも夢に出る
     忘れ得ぬ地。

     この詩人の原風景は
     奄美諸島の島。
     その風景は
     戦争と言う過酷な時を経ても
     微動だにせず
     天への「白い道」を
     指し示している。
     まさしく、生涯の宝なのだ
     原風景とは。

     そして、柱時計のある風景。

         「 柱時計 」

<防空壕で生き残った古い柱時計が あばら家の壁で ボーンボーン
 生まじめに時を知らせていた 

 毎日 ギイコ ギイコ 曲がった腰を伸ばして燻製色の指で ネジを巻
 いたひとも どこかへいってしまった

 祖父母の叔父叔母や兄弟姉妹たちの 変色した風景をかさねて 生き
 過ぎた時間を束ねて 柱時計は行き交った家族たちの 影と時間抱いて
 時をしらせた けれど いまは ない

 駆けぬけていった時の神が 忘れものを思いだしてネジを巻いたのか
 夢のなかの柱時計が いなくなった家族を呼び寄せるように 朽ちた家の
 すみずみまで ボーン ボーン 時を知らせるのだ>  


Posted by nakao at 17:55Comments(0)芸術

2010年11月11日

陸橋

<陸橋>  記 中尾彰秀       詩人・ピアニスト・ヒーラー

 真っ直ぐ進むか
 右へ曲がるか
 陸橋の頂では
 二者択一の歩道
 しかし
 忘れてはいけない
 せっかく
 30度の階段を
 両手に重い荷物下げて
 登って来たのだから
 そのまま
 天(異界)へ昇る道のあることを
 
 あの人は
 そこで一度立ち止まり
 深深と呼吸し
 頃合いに並立する楠を
 しっとり眺めてから
 ニッコリ笑い
 迷うことなく
 消えた  


Posted by nakao at 17:06Comments(0)芸術