2011年09月30日

高層言語伽藍

<高層言語伽藍> 記 中尾彰秀           詩人・ピアニスト・ヒーラー

 みんなの人生を至福にする百の詩集(29)

 「高層言語伽藍」 木村彌一詩集 竹林館 2011年 2000円+税 A5版 
                           98ページ 33篇

         昔の前衛詩は、やたら難しい言葉を並べ、これでもかとばかり
        読者を煙に巻いた。ごく一部その残存詩人はいる。前衛の意味は
        内なる神を見出す、なお表現が先進的。しかし、読者はどこにもい
        ない。表現がそびえ立つばかり。

         この詩集は、表紙を見る限りその類と判断できる。ところが、詩作
        品に目を通すとその判断は見事に裏切られる。立派な まどみちお
        タイプなのだ。小中学生程度の言葉で、自らの神域・内宇宙を描こう
        とする。まどさんと違う所は、内なる宇宙を見出したものの、その中で
        未だに悩み苦しみ迷っている点だ。

         円やかな宇宙一体は、傷を晒し出す。妙に几帳面な哀愁が漂う。
        現代美術の天才であられるが、同様内なる宇宙を彷徨う。ともあれ、
        自意識の泥沼に喘ぎ、言葉を超えた宇宙エネルギーに至らぬ欧米
        的実存にこれが見えぬかと、印籠を示す一詩集ではある。

                「チカチカ」

<ちかちかとする お星さまの お城のいりくち だれかがお星さまのご用があって
 信号をうけとったのだ 

 そのひとは ほそいみちのむこうに じっとまっているひとに 「ちかちか」をとどけに
 いった 

 まっくらだった家が パッとあかるくなって やさしいメロディまでながれだして 

 そのひとは やっと 苦しみからぬけだした

 どうして苦しみからぬけだせたのかは ほんとうのところは わからないままで

 でも いつまでも「ちかちか」は そのひとのむねのなかで ちかちかしていれば
 いいのだが>
                             


Posted by nakao at 11:27Comments(0)芸術