2014年05月04日

福田知子詩集

<福田知子詩集> 記 中尾彰秀                詩人・ピアニスト・ヒーラー

 世界を至福にする百の詩集(77)

 「ノスタルギィ」 福田知子詩集  2012年 思潮社 2200円+税 B6版 96頁 23篇

        現代詩界に君臨する闇の情念。
        味のある言葉によって、その種の悦楽を与えてくれる。
        詩言葉悦楽はしかしいまだ、魂の浄化に至らず
        泥沼を彷徨っている。
        その次元を期待する詩人や評論家は
        かなり多く、それを優れた詩だと思い込んだ
        マスメディアも後を絶たない。
        しかし
        人間の魂の奥深さ崇高さは
        まさしくそんなものではない。

        「春の嵐によせて」

<   さみどりの 目覚めの際のみどりよ
     ゆきつ戻りつ みどりを祈みつつ


 こんな嵐の夜はどこにもいかない あなたはどうにもならない感情を携え
 手のひらに誓うみどりの意識 みどりの雨は遠くをながれ 抑揚のない
 面差しは能面の視線のように空を漂う

 追い越され続けるものたちよ 醒めぎわの視線をたどるがいい
 一言主はほの暗い谷のながれに沿って そぉろり 奉唱する

 ことばを揺り戻すように 水脈に立ちのぼる水煙に

 はらはらと

   零れ

       つたいわたる

   水のあるところ     声のあるところ

 どこにもいかない嵐の夜 髪 解きつつ  たった一言に願いをたくし
 この夜にとどまる

 だから 声に墨をながして 仮寝の閨にたどり入る>  


Posted by nakao at 17:39Comments(0)

2014年05月04日

ヒマーラヤの星(2)

<ヒマーラヤの星(2)> 記 中尾彰秀               詩人・ピアニスト・ヒーラー

 世界を至福にする百の詩集(76)

 「ヒマーラヤの星」 奥田博之詩集 詩画工房 2002年 2310円 A5版 171頁 32篇

     まことにこの世の
     物的現実は懐かしい
     この世の人生
     この地球に
     居るのだから
    
     インドに渡り
     ラーマクリシュナ僧院に13年間
     修業を積んだ
     詩人 奥田博之は
     既に死して詩集を残したが
     残された詩集は語る
     現今の人間の
     魂の輝き
     永遠の生命の環
     宇宙一体波動を

     ちなみに
     箱入りの詩誌は
     世に五万とあるが
     枠を突き抜けて創造的な
     癒しに至るものの何と少ないことか

     「春月」

<公園は 光が冬を忘れて 眼差しが柔らかい
  
 家の戸が あちこちで開いて 

 ベンチで 近所の人達が談笑している

 子供が砂遊びし 大人が 時間を忘れている そんな昼下がり

 花見の席を取る人が ちらほら現れる

 人びとは 胸をときめかせ

 宵闇が近ずいてくる 月が 静かに 登ってくる

 家々のうえに 永遠が 往き渡っている>

    月を抒情で解決しない。
    零と無限を発見したインド。
    内なる宇宙の意識が
    月を永遠と。
     

  


Posted by nakao at 17:05Comments(0)